生板帳

株式投機に関する備忘録です。

J◯◯Cセミナー

企業側からのサーチを避けるために一応ぼやかしときます。
セミナー会場は当該企業の講堂、名目はファイナンスセミナーとのことで全体の満足度としては結構高いものでした。直近のでいうとshareprojectさんがやってたM&Aセミナーに近いといえば近い感じ。なんていうかGDにこんな展開あるのかよって感じでした。


1.題目

実際に存在したJ◯◯Cの業務をベースとして簡略化した案件をGDするというもの。

住商インドネシアに100%出資(400億)の電力リース会社を設立。1400億をJ◯◯CとメインバンクであるSMBCから調達し石炭火力発電所を二機建設。インドネシア政府100%出資の国営電力供給会社に同発電所をリースした。

ところが近年高まるインドネシアの電力需要により、さらに二機の発電所を建設し20年契約でリースするプロジェクトを住商が決定。そのために必要な資金1600億を前プロジェクトのレンダーであるJ◯◯CとSMBCに15年間の融資として要請してる。これには他の銀行(UFJやパリバ)もちょっと興味ある。しかしSMBCは以前のアジア通貨危機がトラウマとなってインドネシアへの長期的な融資について積極的ではあるもののリスクに敏感であるらしく、J◯◯Cに相談してる。

そこで1.当行がこのプロジェクトに融資する意義はどんなものがあるか、2.考えられるリスクは?、3.上記のリスクについて当行が関わるもので軽減できるものは何か

という三本立て。制限時間は1時間くらい。


2.当日の流れ

題目については本当にこれだけで、テーブルについたら1人あたりメモ帳一冊、A3の設問が書かれた資料一枚、水一本という簡素ぶり。こういうセミナーは基本的に50枚組みとかの資料がどーんってあって、それをみんなで分担してディスカッションっていうのが普通の流れなので、この時点で面食らう。抽象的過ぎて分からねーよ!データは?っていう。そして社員さんが頻りに囁く「想像して下さいという言葉」。この時の直感が正しかったことは後に証明される。

不穏な空気を感じつつも自己紹介。メンバーは一橋院生、慶経、早稲田商、上智法と自分の五人。15分の簡単な説明(融資する際の簡単なルールなど。赤字を出さないとかそんな当たり前のこと)の後直ぐディスカッション開始。

1については

  • インドネシア政府と日本政府の間にG(government) to Gのチャネルが作れる
  • 日本企業の支援をすることで日本経済全体に需要を供給できる
  • 民間銀行では難しい多額の資金の長期的な貸付が可能
とかとか。まあ安パイな感じ。

2については

  • 地理的リスク(地震、台風とか)
  • 政治的リスク(インドネシア政府の政権交代に基づく政策変更、そもそも長期的な需要は本当に存在するのか)
  • 住商側のリスク(そもそも400億出して会社作れるの?)
  • 為替リスク(海外事業だから無視できない)
といった意見を出し、ブラッシュアップ。そもそも今回の案件でメインのリスクファクターになり得るのはインドネシア側からのリース料の支払いのみ(つまりリース料が住商子会社に払われ、融資額はこちらに返ってくるのかということ)だったので、そこは簡単にまとめられる。途中で社員の方がパワポでヒント。曰くリスクには

  • コマーシャルリスク(商品開発までの過程)
  • ポリティカルリスク(商品開発以前の土台となる部分についてのリスク)
  • 不可抗力的リスク(どうしようもないやつ)
の3つがあってこれを応用してねとの指示。まあ大体あってるじゃんと思いつつ見直し。

そして3については、実はこれ設問1と2を求めた上で解が出るパターン。つまり融資の意義を考えた次にリスクを取り上げ、最後にそれらを合わせてJ◯◯Cがこのファイナンスに関わるメリットを考えようっていう意図が出題者にはある。このことに気付けていないメンバーもいたのでちょっと気を付けようという話に。で考えた結果

  • 政府系金融機関であるのでこのプロジェクトに相手国から政府保証を付けてもらい、プロジェクトが失敗した場合のリスクヘッジをかけられる
  • J◯◯Cの外貨調達能力によって為替リスクを抑えることが可能
  • J◯◯Cがインフラに融資することで今後日系企業インドネシア進出がスムーズに
などなど。これも与えられた情報から出せるものとしては及第点だと思う。ここまで出して制限時間残り15分。ゆっくりやったが情報少ないので早く終わる。他の班も似たような感じ。

しかし!制限時間10分切って社員の人たちが急にニコニコし始め、そして「追加資料がありますので取りに来てください」との声。は?と思いつつもJ◯◯Cがこんな抽象的な課題をやらせるのかという最初の直感が脳裏をよぎる。

案の定配られた資料を見るとなんと60ページ越え、しかも半分以上英語資料。内訳は1.住商の中期経営計画、2.日本とアジア諸国の経済的関わり、3インドネシアの地理、4インドネシア電力供給会社の経営計画、5電力供給会社の財務諸表(海外のはめちゃくちゃ見辛い)、6インドネシア大統領からの提言、7電力供給会社についてのインドネシア国内格付け会社による分析と評価(ちなみにBBB)

残り10分でこれ読んで発表用にまとめるとか無理ゲー。やはり僕含めメンバー全員量に打ちのめされる。一瞬分担して読み込むかとも思ったがさすがに時間がない+信頼関係的にも少し頼りないので進言せず。みんなで目に付いた重要そうな情報をピックアップすることに。基本的に情報の取捨選択能力を見られてるので住商の株主還元とかのどうでもいい情報は全部カット。結果

  • 住商はアジアでインフラ事業の規模拡大を目論んでいる
  • 日本政府はインドネシア市場を成長規模の拡大が認められるものだと考えてる
  • インドネシアは石炭は国内で賄えるが石油は輸入の必要がある
  • 電力供給会社は現在石油での火力発電に多くを負っているが石油は輸入する必要があるためリスクがでかい。そのため新たなエネルギーを用いてリバランスを目論んでいる

ぐらいの情報は読み取れた。あとはこれを急いで参考にし、結論をまとめ発表といった感じに。


3総評

社員さんの掌の上で踊らされた気分だった。特に終盤の追加資料の流れはよめても良かった気がしないでもないが、精神的な面でしか変わりはないであろうから悔しいけど気にしないでおく。

それより今回のセミナーで学んだのは

  1. 書記の重要さ
  2. 土壇場で出てきた資料の読み込みスピード
の二点。1は今まで書記とか誰がやってもいいじゃんと思っていたが今回一橋の方の鋭い意見をあまり書記の人が書いてくれず(うまくまとめられなかったのだろう)、誰がどんなにいいことを言っても結局班の総意はホワイトボードに書かれたことに帰着してしまうということに気付かされた。僕は字が雑で今まであまり書記したくなかったのだが、もしかしたら書記は相当大事なポジションなのではと感じるに至ったので、これからは積極的にやる必要がありそう。

2の点については、J◯◯Cさんが単なる嫌がらせでこんな演出をするわけがないので恐らくはこういう能力を求められているのだろうなーと。それもそのはずで、実際作業してたらいきなりよく分からない資料がぽんぽん出てくることもあるのだろう。しかもここはクロスボーダー案件のみを扱う国際銀行なので、英語資料だから読むのちょっと遅くなりますとかは困るはず。なんだかんだでよく練られたセミナーだったと思う。

ちなみに最後配られた資料で大事だった情報は

  • 住商の戦略
  • 日本とインドネシアは仲がよかったがアジア通貨危機以来関係が発展していなかった。日本はインドネシア進出を狙っていたが今回の案件はまさにベストということ
  • インドネシア国内での電力関係は需要が圧倒的に高く供給が間に合っていない
  • インドネシア国営電力供給会社は今期大幅な赤字である
  • インドネシア大統領はさっさと火力発電所作れと言ってる
  • インドネシア政府はぶっちゃけ電力供給会社にそこまで協力的ではない
  • 電力供給会社の赤字理由は政府が政策上国内の電気使用料を上げられず、且つ石油の輸入コストがでかいことに起因する
などとのこと。あの時間でこれ全部抽象するのはちょっと無理。けど三分の一くらいはとれたかな……。他にも社員の方は色々仰ってました。いや、まあなんだかんだでいい経験にはなったと思います、うん。